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抵抗 [dogs]

先日、録画していた「情熱大陸」を途中まで観る。
マサイマラ国立保護区で獣医として働く日本人女性(32才)を取り上げていた。
像に潰された人がいたらしい。
ライオンに襲われた人がいたそうだ。
ふ~ん。それはお気の毒に。可哀想に。
で、話は終わるそう。
それが野生動物と共存共生するということ。
さすがに日が沈むと戸外へは出られない。
いなくなった愛猫が一晩樹の上から下りて来れず、
それでも無事でよかったと、他人事のようにさらりと言う。
これが野生動物と伴に大地に根付くということ。

重要な仕事に「狂犬病予防接種」がある。
何日もかけて広大な大地を駆け巡る。
現地では、「犬」は余計者らしい。
牛は生活の糧になる。犬はならない。
理由は単純であるが、人間が生き抜く為の二者択一であるなら
それも仕方がないかも知れないと思う。
年間、狂犬病での死者が多い。
犬の飼い主(基準は定かではない)が、その費用を負担するようなことはない。
と、ここまで番組を観ていた次の瞬間、
大きな男が痩せた犬を蹴りあげる映像が流れた。
おびただしい悲鳴をあげる犬。
現地では「犬」は、決して人間の友達ではなく、家族でもなく、
ただ、疎ましい存在なのだそうだ。
日本人女性獣医師が、声を荒げる。
「誰も近寄らないで!」と。
何度も何度も叫ぶ。「誰も近寄らないで!!」

狭い空間に逃げ込んだ犬を、カメラが捉える。
傍らの獣医師が「怖くないよ。大丈夫だよ」と何度も声をかける。
歯を剥き、唸り続ける犬。
精一杯の抵抗なのだと思う。人間という「怖い生きもの」に対して
全身で抵抗し、身を守っている。
怯えた目をした犬。威嚇し続ける犬。
1頭の犬の内側で、正反対の感情が交差している。絡み合っている。
根気よく語りかける女性獣医師。
やがて。
「犬」は、注射をさせた。

体の中で得体の知れない塊が破裂した。
犬という生きもの。
例え、「1%の望み」でも、人間への信頼感を失わない。
これまでこの犬がどれほどの仕打ちを受けてきたのかは想像がつく。
この先、更に虐待を受ける可能性もある。
それを、可哀想という単純な感情で、処理は出来ない。
マサイの人たちが全員、犬を粗末に扱うとは限らない。
隠れて愛情を注ぐ人もいる筈。犬に心癒される人も必ずいる。
犬も必死なら、人間も「生きること」に必死なのだ。
領域を荒さず、野生動物と共存・共生を続ける人たち。
私たちが野蛮だと騒ぐ現実とはかけ離れた現実が、そこにはある。

それでも。
それでも。
やはり、TVをoffにした。
犬の悲鳴が日常茶飯事だとすれば、
やはり耐え難い。
歯を剥き出し唸り続ける犬の映像は痛ましい。
命の危険を感じた多くの犬たちは、
同じ表情で人間に全身全霊で抵抗するのだ。
しばらく思考が止まり体も固まった。
以前、毛皮を剥がれる狐を知った。
オーバーラップして息苦しくなった。
ソレを記憶から手繰り寄せると、説明が出来ない感情に支配される。
私たちは、一体何の為に生かされているのだろう。生きているのだろう。

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